同軸ケーブルの損失・減衰とは?主な原因と低減のためにできること

同軸ケーブルを使って電気信号を伝送すると、ある程度の信号の損失、減衰が起こります。
そこで今回は、同軸ケーブルとアンプ、タップ、PS等の周辺機器のリサイクル・リユース事業に取り組む私たちクリエイトジャパンが、同軸ケーブルの使用時に信号の損失・減衰が起こる主な原因と、損失を低減するためにできることについて解説していきます。
同軸ケーブルを使った通信で起こる信号損失の原因や、損失・減衰の目安量を把握する方法等を改めて確認しておきたいという通信事業者の方は、ぜひ参考としてご覧ください。
目次
同軸ケーブルでの信号伝送時に起こる損失・減衰とは?
電気信号等を送信する際に、その経路上で信号の一部が失われることを損失、また損失によって徐々に信号強度が低下していくことを減衰と言います。このような信号の損失や減衰は、同軸ケーブルを使った電気信号の伝送時に必ず起こるものであり、大きく以下2つの現象によって引き起こされると考えられています。
【その1】導体損失
同軸ケーブルは、ケーブルの中心に配置された中心導体を使い、電圧の変化を伝えることで信号を送信しますが、高周波電気信号を伝送すると、電流が導体表面を優先的に流れる表皮効果(スキンエフェクト)が発生します。
表皮効果は、効率的な信号伝送に役立つ現象の一つですが、これが行き過ぎると電流の通り道となる導体面積が極端に減少して抵抗が増し、信号の一部が熱に変換されることがあるのです。
熱となった信号は発散され、失われてしまうため、信号の損失・減衰が起きる一因となります。
このように、過度な表皮効果によって信号が失われる現象のことを導体損失、または表皮効果損失と言います。
【その2】誘電損失
同軸ケーブルの中心導体の外側には、軸を同じくする内部絶縁体という絶縁層が配置されています。誘電損失は、この絶縁層を電気信号が通る際に、信号の電界に反応する形で絶縁体の分子が振動して一部の電気信号が熱として発散され、失われてしまう現象のことを言います。
【関連記事】「同軸ケーブルの仕組みを解説|高周波電気信号を伝送するための方法・構造とは?」
同軸ケーブルの使用時に信号が損失・減衰する原因まとめ

先ほど紹介した導体損失と誘電損失は、いずれも高周波数の電気信号を伝送する時ほど起こりやすいことがわかっています。また、信号損失を引き起こしている中心導体、内部絶縁体の各層の素材やつくりによっても、伝送時における信号の損失量が変わってくるとされています。
具体的には、導体損失は中心導体が細く、表皮効果が起こった際の実効面積が小さくなるほど発生しやすくなり、誘電損失は絶縁層の素材の品質が低く、比誘電率が高くなるほど熱が発生しやすくなるため、損失も大きくなるとされているのです。
また、その他にも、同軸ケーブル施工時の物理的ダメージの程度や使用環境、信号を伝送する距離の長さも信号が損失・減衰する原因となることがわかっています。
上記をまとめると、同軸ケーブルの使用時に電気信号の損失と減衰が発生する主な原因としては、以下の4つが挙げられるでしょう。
- 伝送する信号の周波数帯域に対して、同軸ケーブルの太さや材質が合っていない
- 使用する同軸ケーブルの太さ、性能に対して、信号伝送しようとする距離が長すぎる
- 過度な屈曲、圧迫などの物理的ダメージがある状態で同軸ケーブルが施工されている
- 温度や湿度の変化をはじめとする天候の影響により、同軸ケーブルが劣化している
手持ちの同軸ケーブルの損失量を把握する方法はある?
同軸ケーブルを使った通信システムを適切に設計・整備するには、使用予定の同軸ケーブルの損失量を把握し、適切な太さ・品質・性能の同軸ケーブルを選ぶ必要があると考えられます。
同軸ケーブルの損失量の目安を把握する方法としては、大きく以下3つのパターンが挙げられるでしょう。
- 同軸ケーブルのメーカー、販売店が発表している減衰量の標準値(参考値)を確認する
- ネットワークアナライザーなど専用の測定機器を使い、周波数ごとの損失量を計測する
- 信号の損失量目安を算出するための計算式を使い、同軸ケーブルの損失量を推測する
メーカーや販売店など、同軸ケーブルを製造・取り扱いしている会社では、カタログ等で自社の同軸ケーブルの減衰量の目安一覧を公開していることが多いです。使用予定の同軸ケーブルがどのくらい信号を損失・減衰するかの目安を知りたい場合は、まず各社のカタログやサイトを確認してみると良いでしょう。
一方で、手持ちの同軸ケーブルの損失について実測値を知りたい場合は、計測器で損失量を測定することをおすすめします。計算式でも損失量の目安を導き出すことはできますが、計算結果と実測値には多少の誤差や揺らぎが生じる可能性もありますので、重要なシステム等を設計する際には標準値や実測値を参考にした方が良いでしょう。
【関連記事】「同軸ケーブルとは?何に使う?主な使い方や特徴などの基礎知識をまとめて解説」
同軸ケーブル使用時の損失を減らすためにできること
ここからは、同軸ケーブルの伝送時に信号の損失・減衰が起こる原因を踏まえた上で、損失量を少しでも減らすためにできる対策について、紹介していきます。
同軸ケーブルの損失・減衰を減らすためにできることとしては、電気信号を伝送する距離や周波数帯域に合わせて、ケーブルの太さや各層の材質を最適化することが挙げられるでしょう。
具体的には、導体損失の低減には太い中心導体、または多芯構造やラメラ構造のものなど特殊な芯線が使われた同軸ケーブルを使うと、表皮効果が起きても十分な実効面積を確保できるようになるため、損失や減衰が起こりにくくなります。
また誘電損失を減らすには、比誘電率が低く信号の損失が起こりにくい高発泡ポリエチレン(HF)など、高品質な材質の内部絶縁体が使われた同軸ケーブル、または空気誘電体と呼ばれる特殊な絶縁層を持った同軸ケーブルを使うのが有効です。
長距離伝送においても中心導体が太く、かつ中心導体を信号漏洩やノイズから守るシールドの役割を果たす内部絶縁体、外部導体が厚く、高品質な材料からできている同軸ケーブルを使えば、かなり損失を抑えられるようになるでしょう。
同軸ケーブルの信号損失は、用途や想定される周波数帯域、使用環境、伝送距離に合った太さ・材質・性能の種類を選ぶことによって最小限にすることができます。
同軸ケーブルを施工する際は、信号損失が起こる基本的なメカニズムと有効な対策を理解した上で、条件に合った種類・太さの製品を購入するようにしてください。
【関連記事】「同軸ケーブルの基本構造とは?代表的な用途や構造上の特徴についても解説」
同軸ケーブルと周辺機器のリサイクル・リユースに関するご相談は「クリエイトジャパン」へ

私たちクリエイトジャパンは、同軸ケーブルの買取と回収、リサイクルに取り組む会社です。
また同軸ケーブルの買取と再資源化以外にも、以下のような品物について有価物として買取・回収するとともに、必要としている方のもとへ届ける再利用化事業にも注力しております。
- 同軸ケーブル、引き込みケーブル、SSFケーブル
- アンプ、タップ、PS関連、ヘッドエンド設備、端末機器
- バッテリー、保安器、モデム、STB など
なお光ケーブルなど、一部買取対応できないものもございます。そのような場合は、産業廃棄物として当社で運搬・処分対応することも可能です。
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